第38章 voyage ■
それだったら作ってやろうと思った。
旅の道筋をもっと迷ってほしかった。
旅の途中で、もっといろんな所に寄り道して、もっといろんなことを経験して、いろんな奴に出会って、本当に行き着くゴールがそこで良いのか迷ってほしかった。
邪魔したかったわけじゃない。
ただ、旅の1ページくらいは青春を謳歌して、それでもどうしても王子様が傑だと言うのなら、もうあとは背中を押そうと思ってた。
レイは少しずつ僕たちに打ち解けていった。
普通の人とは違っている自分を懸命に押し殺して生きてきたレイが徐々に解放されていったみたいに。
自分は自分のまま生きていいんだと思えたのだと思うし、自分と同じような仲間がいる世界に安心したこともあっただろうし、なによりもちろん好きな人ができたことも大きかったと思う。
少しずつ笑顔も会話も増えていって、
それと同時にピアスも増えていって、
こいつの中にいる傑の存在も大きくなっていて。
あぁ、やっぱり本当はこいつもたくさん人と関わりたかったんだな、それ以前に、好きな人を一途に思って真似までしたりして、やっぱ普通の女の子なんだなと思った。
でも実はこの頃、僕にも傑にも付き合ってる女がいた。
この頃の僕らは結構チャラかった。
傑は本当に好きなのかどうなのかは知らないが、僕が紹介したり勧める女とは片っ端から付き合ったり遊んだりしてて…
まぁ僕同様ただの暇つぶしみたいなもんだったと思うけど。
でもレイが現れてから徐々に女遊びはしなくなっちゃって、で、付き合ってた女とも別れて…
僕がどれだけ問い詰められたことか…
このままだとしつこい女に優しい傑は言いくるめられそうだと思った。
初めてレイと組んで任務に出向いた際に聞いてみた。
「お前さ〜、傑のこと大好きだろ〜?」
「っえ!…え…ななに急に!それどういう…」
「もち!恋愛的意味でだよっ!」
「そっ…それは……」
「いや、もうその反応もそうだし、皆とっくに気付いてるから隠す必要はないよー?ただねぇ、ひとつ言いたいことがあるわけ。」
「…なに?」
「あいつモテるからさ。
早くしないと誰かのものになっちゃうよー?」