第37章 nightmare
"じゃあ行こうか"
"ど、どこへ…"
"君が君でいられる場所さ"
あの時からまた私の物語は動き出した。
"私って何?"
私は、あの時の答えを見つけられた気がした。
"お姫様って、必ず王子様が登場すんじゃん?そんな奴が迎えに来てくれるかもよ?"
本当に来てくれた。
あの子の言っていた通りだと思った。
"魔法の絨毯に乗ってみたいし、綺麗な夜空をあんなふうに見てみたいし…"
それも叶った。
その人の出した魔法の絨毯に乗って、綺麗な夜空を一緒に飛んだ。
"お姫様の結末は、必ずハッピーエンドって決まってんだよ。"
王子様が迎えに来てくれて、
私が私でいられるお城を見つけて、
心の底から幸せになれた。
そう思った。
でも私は、王子様を失って、夢と希望を失って、
なにもかもを諦めた。
暗闇の中で、何度も傑の名前を呼んで、その姿を探した。
お願い…1人にしないで…
置いていかないで…
次第に涙が出てきて、嗚咽が止まらなくなった。
ふいに、手を掴まれた。
あ…よかった。
ねぇ、そのまま離さないで?傑…
でも、また離れた。
私はまた泣きながら名前を呼び、暗闇を歩き回った。
お願い…私を抱きしめて…
離さないで…
そう言って泣きじゃくっていると、
ギュッと抱き締められ、キスをされた。
この上なく安心した。
死んでもいいとすら思えた。
ねぇ、このままでいて?
離れないで…ずっとキスをしていて…
好きって言って…お願い…
けれど、また離されてしまった。
どうして、なんで、やっぱり私が普通じゃないから?
"私って何?"
また物語の振り出しに戻った。
でももういい…疲れたよ…
"始めたら最後まで進めろよ。
お前の始めた物語なんだから。"
突然リフレインしたその言葉にハッとなる。
"幸せになることを諦めんな"
頭を射抜かれたような感覚がして目を見開いた。
……悟……だったの?
さと…る…
私は手を伸ばし、何かを掴んだ。
私は……
諦めたく…ないよ…
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