第37章 nightmare
「…さとる?」
「ふ……そう、
君のことがだーいすきな五条悟だよ、おはよ。」
覆いかぶさってニコニコ笑っている五条。
レイは状況が掴めない。
「…え…なにこれ…
どうなっちゃってんの…」
「覚えてないの?酒飲んで潰れて、恵が困ってたんだよー?」
「……あ!…ごめ…ん。」
「……大丈夫?まだ顔赤いね?」
そう言って五条が頬を触る。
「っ…あのさ、悟。な、なんでこんなに…近いの…」
介抱してくれていたとしても、覆いかぶさっているなんておかしい。
レイは困惑の表情を浮かべた。
「ふっ、だって僕の名前呼んでたからさ。
しかも離れようとしても掴んできたし。」
「…あ……」
そうだ。そういえば…
夢を見てて……
「なんか…夢の中で…昔のことを思い出してて…
子供の頃…たった一度だけだったけど、話した男の子が…なんか悟みたいだったような気が…して…」
五条の表情が変わった。
目を見開いたかと思えば、また細め、フッと笑った。
「で?そいつがなんて?」
「ん……いろいろ。
幸せになることを諦めるな…とか…。」
五条は真顔のまま沈黙した。
あまりにも近くでジッと見つめられているのでレイの鼓動が早くなる。
「…… レイは結局、なんの姫を選んだの?」
「…え……」
「そいつはこうも言ってなかったー?
始めたら最後まで進めろよ。お前の始めた物語なんだから。って。」
レイはこれでもかというほど目を見開いた。
光を帯びている碧眼を凝視する。
「…やっ…ぱり……悟…だったの?」
「はっ。気付くのに何年かかってんのお姫様。
ようやく100年の眠りから覚めたか?眠り姫。」
悟は知って…たの…?
いつ…から…?
私はそんな遠い過去の記憶、丸々全て忘れてしまっていたというのに…