第37章 nightmare
「ねぇ、君は…何をしに来たの?」
「え?夜のお散歩。暇つぶし。そっちは?
あ!ひょっとして迷子?ふははっ」
「わ、たしは…学校も家も…抜け出してきた」
「うっそ!マジなの?やるじゃん!」
「でも…迷子かも…。ここがどこだか分からない」
「へぇ!うち来る?って言ってあげたいけどうちはいろいろ厳しいんだよねー。不審者なんかに思われたら殺されるかもしんねーし!」
「あ、いいの、大丈夫… No worries. 」
「でもなんかいいなぁそーゆーの。
あ〜俺も家出少年になろっかなぁ〜」
「…家族も学校も、問題ないならやめたほうがいいよ。私は別に…ほんとはこうしたかったわけじゃない…」
私はなぜか、顔も見えない見ず知らずのその子に、どうして今自分がこうしているのかを大雑把に話した。
変なものが見えることはもちろん言わなかったけど、どれも当然面白くもない暗い話をした。
けれどその子はなぜだか明るかった。
「お姫様とかさいっこうじゃんか!」
「なにも良くない…。お姫様は…嫌い。」
「え!珍しいね?女の子は皆好きじゃん!」
「とにかく…嫌なの。」
「でもさー、お姫様って、必ず王子様が登場すんじゃん?そんな奴が迎えに来てくれるかもよ?いつか。ふははっ」
バカにしたような笑い方に少しイラッとした。
こっちは大真面目なのに…
「男の子のくせに、お姫様の話に詳しいんだね」
「まぁね!家でよくいろいろ映画みせられるし!」
「ふぅん… I got it.」
「あ〜俺あれが好きだな!えーっと、アラジン!」
「…あぁ……確か…ジャスミンか…」
「王子が初めから王子じゃなくて、主役が王子側ってのはアラジンだけじゃん?」
確かに。言われて気がついた。
他のはどれも、女の子が王子様の迎えでお姫様になるみたいなストーリーばかりだ。