第37章 nightmare
どうして私だけ輪に入れないのか、それはその頃にはもう理解できていた。
私は、"普通"じゃない。
皆には見えないものが見えるし、感じるし、なぜか皆よりも運動ができる。
力が強くて足も速い。
だから必死で普通になろうと皆に合わせてた。
暗記が得意で、勉強もできた。
読書が好きで、英語の本がお気に入りだった。
でも普通になりたくて、テストでもわざと間違えて平均を狙っていた。
それでも普通の子には見られなかった。
問題行動ばかりするし、遅刻したり早退したり、
親にも、普通じゃないと言われ続け、
いよいよ私は分からなくなった。
" 私って何?"
高学年になり、知恵がついてくると、
いじめてくる子も出てきた。
でもそれがエスカレートしなかったのは、やっぱり私が普通じゃなかったからだ。
「馬鹿やめとけ!"お姫様"なんだぞ!」
「あいつのことは丁重に扱え!」
「目つけられたら処刑されるぞ!」
「機嫌を損ねるな!"お姫様扱い"しろ!」
"お姫様"
それって、シンデレラとか白雪姫とか眠り姫とかのこと?
お姫様はこんな風に扱われるの?
常に引きつった顔で腫れ物を扱うようにして、必要最低限しか関わらなくて、誰も友達になってくれなくて、誰も話を聞いてくれなくて、すぐに目を逸らしてしまう人たちしか周りにいなくて…?
女の子なら誰もが1度は憧れたことがある"お姫様"
私も小さい頃は家でお姫様のビデオを見るのが好きだった。
テレビドラマで時たま見るドレス姿の花嫁に憧れた。
いつかあんなふうになりたいって。
大きくなったら、私もいつか、お姫様になれるかもしれないって。
でも、いつしか私は、
この言葉が、存在が、
"お姫様" が、
大嫌いになった。