第37章 nightmare
"別に…もう辛くないよっ。平気!"
無理やり作った笑顔を見て
その時僕の中に生まれた感情は、
哀れみでも罪悪感でもなかった。
薄っぺらい優越感でもなかった。
こんなふうに搾取される側には死んでも回りたくない。
ただ好きという気持ちだけでよかったのに。
繋がることもできないと分かっていたのに。
ほらまた自分だけ勝手に好きで、
勝手に嫉妬してる。
"仕方ないよ。全部私の運命だったんだもん"
なぁ…
運命が、人を幸せにしてくれんのか?
違う。
誰よりも幸せを願う奴が幸せにするんだ。
だから僕は…
運命なんかより自分を信じたい。
辛い時に呟ける名前があることは
暗闇を照らす光りがあるも同然だと思うんだ。
なのに、
お前がいつも呟くその名前はさ、
ねぇ、どういう存在?
なんでそんなにいつも苦しそうに呟く?
好きな人が自分を好きでいてくれる世界がどんな世界かって
そんなことに興味があるわけじゃない。
ただ……
「…ダメだ……」
だんだんわかんなくなってくるよ、お前を見てると。
レイが誰を好きだってなんだって、
もう無条件でもっと近くにいたいって思ってしまう。
女は恋すると綺麗になるっていうけどさ、
男はダメだな、バカになるだけだ。
レイが僕のものだったことは
1度もない。けど……
「…なぁ、レイ…やっぱ…ーーきだ。」
ふっ、これも呪いだよな。
でも安心してよ。
あと何万年生きたって、悩まない日なんて誰にも来ないし、誰が隣にいても孤独じゃなくなる日なんて来ないから。
永遠に孤独だけど、それは自分だけじゃないし、誰かと繋がらずに生きては行けないから完結しない。
これが世界の決まり。物語の決まりだ。
俺は…僕は…
ああ…
決めたよ。誓った。今。
シナリオを変える。無理やりにでも。
最後まで姫の物語に責任を持つよ。
いや、違う。
今更、進めてきた物語は書き換えられないから、
だからそれに負けない完結編を僕が書く。
僕がいて、レイがいる。
こういう現実からスタートして。