第37章 nightmare
僕が1番そばに居たいし触れていたいんだよ。
たとえ傑みたいな関係になれなくても、お前に1番近いポジションだけは譲れないんだ。
それくらいは、いいだろ?
「んん……すぐる……」
レイが苦しそうな表情でそう呟いて身を捩った。
五条は真顔でそれを見下ろしたままぽつりと言った。
「…いいぜ?…そんなに言うなら。」
お前を安心させられるなら、傑にでもなんでもなってやるよ。
五条はレイの隣に横になり、目尻の涙を拭い、髪を撫でる。
「その代わり、傑の夢見ろよ?いいな?」
そしたら心底安心して、もうこれ以上泣かずに熟睡できるか?
できるよな?
「…すっ…るっ…すぐ……す…る」
「…はいはい。いるよ」
五条は魘されているレイをギュッと抱き寄せ、頭を胸に押し付けて包み込んだ。
傑を探している夢を見てるんだろう。
あいつに置いてかれる夢か…それとも…。
まだすすり泣くような声を途切れ途切れに発している。
五条は更にギュッと抱き包んだ。
「頼むよ、傑……早く抱きしめてやってくれ」
「っ…で……な……っる……まっ…」
「なぁ…早く、…キスしてやれよ…」
「ひ…りに…な…っで……」
「傑…好きって言ってやってくれお願いだ…
夢の中でもレイを悲しませんなよ…」
頼むよ…
こんなに泣いてるぜ?
お前を想って。お前を捜して。
「っく…ひっ…うぅ…なっ…でよ……」
「… レイ?」
あれ…?
夢の中でも置いてかれちゃったの?
あいつ…殴ってやりてぇよ…
「バカ傑…ざけんなよ。
いつものニヒルスマイルでキスしてやれよ。」
苦痛の表情で震えているレイの唇に親指を滑らせ、顔を歪める。
こんなレイの表情は見ているだけで胸が締め付けられる思いがする。
お前は平気なのか、傑?
「…指じゃあやっぱりごまかせないかな?」
柔らかいその感触は、五条の中の切なさをみるみる倍増させていく。
同時に、言葉では言い表せない複雑な感情にもなる。
レイが傑の名前を呼ぶたびに…
置いてかないで、捨てないで、行かないで、
と言う度に…
「傑…お前が羨ましいよ」