第37章 nightmare
五条はレイを寝室のベッドに横たわらせ、目隠しを取ってその姿を見下ろす。
火照った赤い顔をして、クークーと寝息を立てている。
その姿は、もう随分と昔のあの晩のことを思い出してしまう。
「はぁ…酔っ払いお姫様、なんだか懐かしいね?」
あの時は、タクシーで連れ去ろうとしていた男を傑が乱雑に押しやって…で、お姫様抱っこしてずっと心配そうに見つめていたのも傑だった。
それ以来、傑に言われて酒を飲むことなんて1度もなかったってのに…
恵は飲んでなかったみたいだけど、レイは何を話して何を考えどういうつもりでこんな……
僕のことを傑だと思って、キスに安堵してくれちゃって…
いつでもお前は僕の気持ちを乱してくれるよね…
まぁキスしたのは僕の方からだけど。
だって早く恵の手 離してほしかったからさ…
なーんてただの言い訳なんだよね。
結局僕は、いつどんなときでも、
なにかしら理由を乗っけて
レイにキスしたいだけ。触れたいだけ。
1度目のキスは、ぶっちゃけなんでしたのか分からない。
絶対こいつも気付いてないし。
2度目のキスは、誰にも言ったことのない辛い記憶を話してくれたのに涙を見せないレイを泣かせたくて。
でも表向きは、ゲームに負けた方が勝った方の願いを3つ聞く約束で、僕が勝ったからアラジンになってキスをした。
最後の願いはまだとっておいてる。
叶うかわかんないけど。
3度目のキスは、傑が離れて行ってしまって死にたいと絶望しているレイを慰めたくて。
4度目のキスは、いつまでも熟睡していて夢の中にいるレイを目覚めさせたくて。
で、さっきのキスは、他の男に触れていてほしくなくて。
でもホントはどれも違う。
ただ、僕がレイにキスをしたかっただけ。
その顔見ると、触れたくなるんだよ。
その唇を見ると、奪いたくなるんだ。
傑がいた頃は、諦められてたよ。
だってお前、僕がなにをしてもあいつのことしか見てなかったし、あいつのことしか頭になかったし。
傑はこいつにとっての王子さまだった。
傑がいなくなった今もそうかもしれないけど、でもその存在が完全にいなくなった今は、僕がレイの1番近くて1番理解してる存在になったと思ってる。
だから・・・