第37章 nightmare
「おっかしいな〜…傑の言いつけ破るとかなんかあったのかなぁ〜」
そう言いながら伏黒を見る。
伏黒は心配そうな目を彼女に向けていた。
「…なにかあったー?」
「別に…なにもありませんよ」
「……え、てか何この恵の手。
ウケる!プーさんじゃん!」
「…そんなことはどうでもいいので早く彼女を連れ帰ってください。」
五条はレイの隣に座ると彼女の顔の向きを変えて覗き込んだ。
そしてみるみる眉を下げる。
目隠しをしているので五条の表情は眉でしか判断できず、伏黒は訝しげに言った。
「……どうしました?」
「いや……えらくブサイクだなと思ってね…」
「・・・」
「あっ、とりあえずお会計してくるね!」
五条はバッと立ち上がり、伝票を持ってレジへ行ってしまった。
伏黒は手を繋いだ状態のまま立ち上がり、前かがみになってその顔を覗いた。
「っ……」
レイの赤らんだ頬にはたくさんの涙が伝っていて、目元はびしょびしょに濡れていた。
伏黒はつい脱力してまた座り込んでしまった。
なんとも言えない複雑な感情が襲ってきて、息苦しさを覚えた。
「おっまた〜!
よしっ!こっからは本気で行くよっ!」
五条が戻ってきたかと思えば、レイの体を抱えあげた。
「……ん………や…っ…」
レイの眉がピクリと動き、抵抗を見せるように手の力も強くなった。
伏黒はその手を強引に離そうとすることがなぜだかできずにいた。
「や、じゃなくって!
… レイほらっ!帰るんだよっ」
「…や………ない…で……」
レイは意識がないはずなのに何かを呟きながらまたボロボロと涙が流れ始めた。
「あーもー…参ったな…」
「……す…っ…る……」
伏黒には、またあの名前を呼んだように聞こえた。
五条も全てを察したかのようにまたレイを座らせた。
「……あぁ…なるほど?」
そう静かに呟いたかと思えば、おもむろにレイの両頬を両手で包み上げ、顔を近づけた。