第37章 nightmare
「はぁ…私もいつも笑顔で…いなくちゃね…」
寂しそうに笑うレイに伏黒は意を決したように言った。
「… レイさん、知ってますか。
過去を捨てなくては、未来の場所はないんですよ…」
「……っ。」
レイは言葉に詰まってしまった。
"行こう、君が君でいられる場所へ"
じゃあ…今の…
私の……居場所は……
徐々に瞼が重くなり、血流が速くなったのが分かった。
なんだか頭がクラクラする…
いつか…
いつか……
これでよかったんだと思いたい。
何年かかってでも…いつか…
その日のために今は…
声を上げて一晩中だって泣きたい…
レイがコテンとテーブルに伏せそうになったので、伏黒は慌てて目の前の食器を退けた。
案の定レイは片腕を伸ばしてテーブルに伏せてしまった。
伏黒は頭を掻きながらため息を吐く。
「やっぱ潰れちまったじゃんかよ…
どーすりゃいい……」
その時、伸ばされている片手がピクリと動いたのが分かった。
「……ん……まっ…て…」
「…?」
「いか…な……で……」
「……」
「おいて…か……で……」
伏黒は目を見開いたまま唖然とする。
待って?行かないで?置いてかないで?
ヒクヒクと震えているその手を、気がついたら握っていた。
すると、物凄い強さでギュッと握り返された。
「…すぐ…る……すぐる…っ…」
「……え?」
咄嗟に手を離そうとしても、決して逃すまいとするかのように凄い力で離れない。
「……あ……して…る…」
伏黒は、掴まれている自分の手にあるプーさんのイラストを眺めたまま微動だにできないでいた。
すぐる…?
確かにそう言ったように聞こえた。
それって…もしかして…?
もちろん噂には聞いていた。
自分が高専に来る前の
去年起きたという出来事のことも…
そういえばこの人…って…
呪霊操術……!
その時突然 伏黒のスマホが鳴った。