第37章 nightmare
「… 過去は捨てることはできない。現在は止めることができない。でも…未来は決めることができますよね。」
強く言い放ったその言葉に、レイは目を見開いて視線を移す。
黒々とした真剣な目が突き刺さる。
「伏黒くん……すごく…大人だね……
私のことだって、何も聞いてこないし…」
ついそう呟いてしまった。
私の本当のことを知っているのは、生徒では伏黒くんただ1人だけなのだ。
過去のことだって、なぜさっき泣いていたのかだって、聞いては来ない。
伏黒はフイと視線を逸らした。
「別に…。誰にだって語れないことはあるだろうし。ただ…聞きたくないわけではないですよ…もちろん気にはなってますから…」
そりゃぁそうだよね…人間なのだから…
好奇心はあるのが当然だし、隠されていて良い気がしないのは誰でも同じだ。
レイは静かにぽつりぽつりと話し出す。
「大好きな人が、いたの…
自分の命よりも大切で……毎日をその人のために生きてて…
その人がいるから生きれてて…その人がいたから私でいられたの…
でももう今は…その人はどこにもいなくてね……
どうしても…思い出してしまって…受け入れられなくて…悲しく…なるんだ…」
伏黒は目を見開いた。
こんなに悲しげな笑みは生まれて初めて見たと思ったからだ。
「重いよね…私…」
「重いですね。」
その即答に、レイは唇を噛み締める。
「……ていうか、レイさんがどこまでも自分を重くしてますよね。……過去にしがみついて前進するのは、鉄球のついた鎖を引きずって歩くようなものですから。」
「っ……」
その時、注文した料理が運ばれてきた。
空気を変えるように、同時にいただきますと言って食べ始める。