第37章 nightmare
「あ…それは……」
「…ん?」
「く、くまの中に……」
「え?!」
なんとレイは以前、クマが寝ている間にクマの耳の辺りにそれを入れ込み、縫い閉じてしまったらしい。
五条は噴き出した。
「マジか〜。あいつも絶対気付いてないな。ウケる。」
「その頃私、もうピアスできる場所どこにもなかったし、無くしちゃ嫌だったから…」
「うんうんまぁ確かにそれなら絶対に無くさないもんね」
「それより悟。もう行かなきゃじゃない?」
「おっと、そだね。じゃー僕が帰るまでいい子にしててね?」
そう言って顔を覗いてくる五条から仏頂面で目を背ける。
「子供扱いしないでよ。」
「レイは僕より10歳も子供じゃん〜」
「っ。違うし…そういうの笑えないんだけど?」
「はははっ、じょーだんじょーだん!
JKを家に連れ込んでるとか犯罪だもんね!ははっ」
「だから…笑えないし…」
五条は深く息を吐くと、真剣な顔で言った。
「無理にでも笑えよ…今は…」
レイはハッとしたように顔を上げた。
「……そんなに辛い?」
「……別に…もう辛くないよっ平気!」
完全に、無理やり作ったような笑顔を向けられ、五条は眉を顰める。
「仕方ないよ。全部私の運命だったんだもん。」
「・・・」
五条はフーっと息を吐いてから、本棚を指さした。
「あそこにさ、当時レイの部屋にあった本、全部並べてあるから読み返してみたら?ちなみに僕も全部読んだ。」
「えっ、勝手に読まないでよっ!なんか恥ずかしいじゃんっ」
「いやぁ〜ほーんとレイはお姫様が好きなんだなぁって思ったよ。でも大丈夫。僕も好きだから。」
レイは律儀に並べられている本棚へ行き、目を細める。
ここへ来た時から気づいてはいたけど…本当に全部取っておいてくれたんだな…
あのころと変わらず綺麗だけど、プリンセス関連のものや固い感じの哲学書、英語の本も多く、自分の趣味を覗き見されている気分でなんとなく気まずい。