第37章 nightmare
レイはひとまずお風呂に入ることにした。
置いてあった入浴剤をたっぷり入れた湯船に浸かる。
透き通っていない白濁とした紫色の湯からラベンダーの香りがし、心地良さに目を瞑る。
「はーぁ…きもち〜…落ち着く…」
まだ夕方だけど、眠たくなってきてしまった。
クマは今頃、硝子と飲みに行ってるのかな…
悟はまだ高専かな、それともどこか別の仕事かな…
1人を快適って思える日が私に来るだろうか…
一人暮らししてる人ってすごいな…
そんなことを考える。
「ふー…」
ふと脳裏に浮かんできたのはディズニーのホテルでのクマと夏油との入浴。
あのときはたっくさん笑って嫌なこと何一つ浮かばないほど幸せで楽しくて…
戻りたいな…
あの時に…
せめて夢の中だけでも…またあの時に戻って…
レイはいつの間にか意識を手放していた。
「……ーい」
「……」
「ぉーい…」
「……」
「生きてるー?」
声が聞こえてきたかと思えばグラグラと体を揺すられ目を開ける。
目隠し越しに、五条が顔を覗き込んでいた。
「風呂入ったまま寝るとか危険だよ?
マジで死ぬよ?」
「…んぁー…ごめ……って……
ひゃぁあああ!!!なんっなんで入ってくるの!!」
レイは慌てて五条の手を払い、ギュッと両腕で自分の体を包んだ。
「見えてないから大丈夫だよ〜」
五条はケラケラと笑っている。
確かに入浴剤のおかげで裸は見えてないかもしれない…
でも……
「なっ、もし入浴剤入れてなかったらどうすんの!こんなの入ってみなくちゃわからないことじゃん!!どういうつもりだったわけ!!」
「だって返事がないから〜
ぶっ倒れてたらとかいろいろ考えるとそんなこと言ってる場合じゃないよ?」
「だとしても!扉叩くとか他にやり方はあったでしょ?!
もうっバカ!変態!」
「そーんなに怒らなくてもぉ〜
こっちはすごーく心配して覗いてやったのにー」
「だ、大丈夫だから早く出てってよ!」
「僕もお風呂入りに一旦戻ってきたのよ。
一緒に入っていいー?」
「ダメに決まってるでしょ!!
いっ今上がるから早くあっち行って!!」
五条は冗談なのか本気なのか、ちぇ〜と言いながら扉を閉める。
レイは爆発しそうなほど波打っている鼓動を沈めるように顔に何度もお湯をかけた。