第36章 inequality 【特別編】
「私は… 表向きは加茂家の嫡男だが、実際は側室の息子なんですよ。」
「そう…だったんだ。」
その後、たどたどしく説明した彼の話はこうだった。
正室が加茂家相伝の術式を継いだ男児を産めなかったため、術式を継いでいた彼が嫡男として本家に迎えいれられた。
母親は加茂家内では「爛れた側妻」として虐げられ、幼い頃に家を追われているということだった。
だからさっき、あんなに複雑そうな表情をしていたのか…
クマは腕を組んで唸った。
「なんとも理不尽な話だな。往々にして人間はそういった残虐性を持ち合わせている。」
「でも、話してくれてありがとう。
辛い過去があった分、きっと加茂くんはもっともっと強くなっていくだろうね!」
加茂はその笑顔とその言葉に口ごもってしまった。
最後まで己を案じ続けてくれた母親への想いは強く、その想いが加茂家の次期当主としての自覚と責任感に繋がっている。
けれど、たまに辛くなる時はあるのだ。
どこまで強くなれば、また母に会える日が来るのかと…
「私もクマも、加茂くんのこと応援してるよ!
ずっと味方だからね!一緒に頑張ろうっ!」
どこまでも純粋無垢な満面の笑みを向けられ、加茂の心は少しだけ軽くなった。
自身のことなど誰にも言ったことがなかったからかもしれない。
それを彼女たちは普通に受け入れ味方とまで言ってくれた。
けれど……
「なぜ…そこまで言えるんです…」
「同情とかじゃないからね?なんだか加茂くんって…私が好きだった人に似ている気がするんだよね…だからかな、なんか…贔屓したくなっちゃうっていうか。ははは」
レイは明るく笑い、その隣でクマが呆れたような顔をしている。