第36章 inequality 【特別編】
「おい、レイ。
ペンと紙あるか?」
「あ、うん。」
突然なんだろうか?と思いながらも、バッグから手帳とペンを出してクマに渡した。
するとクマはそこにつらつらと文字を書いていく。
「おい、加茂。お前のフルネームはこう書くんだよな?」
手帳には、" 加茂憲紀 " としっかり漢字で書かれていた。
「…そうだが…。というか…君は凄いな。
漢字まで書けるのか…しかも字も綺麗だ」
「あ?ナメんなよ?」
「それがどうかしたのクマ?」
クマはその下にまた何かを書き出した。
「……で、こういう奴も確かいたよな?」
そう言って見せてきたそこには、" 加茂憲倫 " と書かれている。
それを見て加茂は明らかに顔色を悪くした。
レイは誰のことか分からなくて疑問符が浮かぶ。
「え、クマ、これは誰なの?」
「あ?てめ、知らねぇのか?
明治の頃に存在していた史上最悪の呪術師じゃねぇか。」
「えっ……」
さすがはクマだ。
歴史上の人物は全てインプット済なのだ。
「そいつはな……」
その後のクマの話には驚愕した。
明治時代に活躍した加茂憲倫……
呪術界御三家の名家・加茂家に生まれ、様々な呪術文化財を遺した。
その一方で、基本的には自分自身の目的や欲の為ならば手段を択ばない人物であり、他人を踏みにじることを何とも思っていない人間性の持ち主だったらしく、今でも様々なことが謎に包まれているという。
「どっちも読みは"かものりとし"
なぜなんだ?」
加茂憲紀と加茂憲倫…
恐らく血の繋がりはあるだろうことは伺える。
加茂は眉をひそめながら静かに語り出した。
「恐らく……私が側室の子であるから…
嫌がらせなのだと思っています…
御三家の汚点であるその人物と読みが同じ名を付けられたのは…」
レイは目を見開いた。
全く意味がわからない。
どういうことなのだろう?