第36章 inequality 【特別編】
「ん〜、まぁ〜、被害はデカかったが、撤退が思ったよりも早かったからな。ちなみに俺は特級呪霊一体と1級呪霊五体を倒したところで終了されちまったが…」
「えぇ?!すごい!!」
レイはつい大声を出してしまった。
しかし、考えてみたら、東堂は非呪師の家系ながら一級呪術師であり、学生としては頭一つ抜けた実力を持つと五条も賞賛していた。
「ほう。たしか交流会の時も見ていて思ったが、お前の術式はなかなか興味深かった。自分の戦闘補助だけでなく味方のサポートとしても有用だしな。」
東堂の術式は、術式範囲内にある“一定以上の呪力を持ったモノ”の位置を入れ替えることができるという、入れ替える対象が増えるほど敵にとっては厄介なものである。
「あ〜でも俺、百鬼夜行の時は1級相手には術式使ってねぇよ?」
「えぇっ?!」
レイはまた驚嘆してしまった。
1級五体を術式なしに倒したなんて伝説だ…
「それで協調性があれば完璧なのにな、お前。」
クマの発言に、やはり完璧な者はいないのだろうということを再認識させられ、レイは苦笑いする。
しかし、五条の言っていたように、やはり術師のレベルは年々上がっているようだ。
「加茂くんの赤血操術もめちゃめちゃ凄かったよ〜
私は血を扱う術式は初めて見たから圧倒されちゃった。」
彼の術式は、加茂家相伝のものであり、自分の血液と血液がついた物を自在に操れるというものだ。
血液パックの血液も有効らしく、自身の血流を操作することで、身体能力を爆発的に向上させることなんかもできるらしい。
「さすが、御三家のひとつ、加茂家の出身という感じだよ。」
「・・・」
レイの言葉に、加茂はかなり居心地悪そうな顔をして静かにコーヒーを啜る。
レイは頭に疑問符が浮かんだ。
なにか失礼な発言をしてしまっただろうか?