第36章 inequality 【特別編】
「あ、えっっと……か、かわいいですね…」
ど、どうしよう?
この状況はどうすればいい?
窃盗犯にはなりたくない…
しかもめちゃくちゃクマキレてるじゃん!
クマの怒りとイラつきは最高潮に達しているようで、腕を組んでおどろおどろしい呪力を全身から滾らせている。
「はい、お時間ですー。次の方ー…」
「ええっ?!」
「お姉さんまたね〜♡また絶対会いに来てねー♡」
サポーターに退かされてしまい、
加茂の番になった。
高田は満面の笑みで加茂の手を両手で包む。
「こんにちは〜♡♡」
「は、はぁ…あの、そのクマの人形ですけどね、」
「うん?あぁ、これ、さっきのお兄さんにもらっ」
「呪われています!その上、盗聴器などが中に仕込まれている可能性がある!調べた方がいい。」
高田の笑みは消え、当然驚いたような表情になる。
「そんな……」
「私には分かる。……ほら音がする…」
加茂はクマを抱え、ガクガクと縦に振った。
「アイドルにこういったものを渡す変態は世の中多いので安易に受け取らない方がいい。これは私が預かってあげます。」
「えっ、ちょと……」
加茂はクマを抱えたまま足速にその場を離れて行った。
「わぁ!加茂くん!なんでっ?!」
「おいレイてめぇ!!おいらのこと見捨てやがったな?!一生許さねぇからな!!」
「違う違う!作戦を考えてたんだよ!!
加茂くん…ありがとうっ…」
加茂は何も言わずにクマを差し出した。
「加茂憲紀…お前、なかなか頼もしい奴だ。
助かったぜぇ……
まさかお前も高田ファンだとは思わなかったが。」
「違う。断じて私はファンではない。
……で、あいつは、東堂は、どこ行った?」
「知るかあんな奴!放っておけ!」
「確かにそうだな。放っておこう。」
「えぇ?!?!」
レイは懸命に目を走らせた。
大きいからすぐに気付くはず……あ!!いた!!