第36章 inequality 【特別編】
ー 東堂葵・加茂憲紀 ー
「うあー…マジめんどくせぇこいつー…」
「なになに?」
クマがスマホを放り投げたので、レイはそれを手に取り画面を覗いた。
どうやらクマは東堂とLINEをしていたらしい。
"高田ちゃんの握手会、お前も行くよな?!"
"なぜおいらが…"
"お前も高田ちゃんファンだろ?!
明日池袋の〇〇ホールでイベントがあるんだよ"
"てめぇで行ってこいや
おいらは忙しい"
"ダメだ!高田ちゃんはリラックマが好きなんだ
きっと大喜びする!"
"おいらリラックマでもくまモンでもねーんだが"
"とにかく明日だ!待ち合わせは池袋東口!
時間は11時だ!いいな!"
レイは苦笑いする。
「随分と強引だねぇ…
でもいいじゃん行ってきなよ。
案外楽しいかもしれないよー?」
「ならお前が行ってこい。
そもそもおいら高田のファンでもなんでもねーんだ」
「え、私?あーでも…アイドルに会えるなんてそうそうないし…行ってみようかな…」
正直ちょっと興味はある。
テレビで一瞬しか見たことがないが、この機会を逃すのは勿体ない。
だが、あの東堂葵というデカくて強面な人と2人きりというのは流石に気が引ける。
「ね、ねぇ…クマも行こうよ?」
「あぁん?!」
「誘われたのはクマなんだしさぁ…
東堂くんも、私じゃなくてクマと行きたいわけだし。」
クマは絶対に嫌だというようにソファーに寝そべってしまった。
「ちょっと〜!
また甘いもの食べさせてあげるからさー!ねー?」
クマは諦めたようにため息を吐いて唸った。