第36章 inequality 【特別編】
「そこでは憂太と傑がやり合ってて、真希は瀕死の状態だった。俺と棘も参戦したんだが、いとも簡単に傑にボコられたな。対複数人戦でもあいつは無敵だった。
最後は憂太の持つ怨霊呪霊に致命傷負わされたが。
で、その後は……あ、えっと…」
「知ってる。
最後は五条がトドメを刺して終わったんだろ。」
戸惑っていたパンダに、クマはハッキリ言い放った。
「…知っていたか。
お前らが1番辛いよな…傑は…お前らにとって…
家族…だったもんな…。」
パンダが悲しそうな声で呟いた。
狗巻は眉をひそめてレイにペンダントを戻した。
狗巻も、このプリクラの通り、夏油傑がレイとクマと特別な関係だったのだと察したのだろう。
「…ごめんね、棘くんも、パンダも…。
す、傑が…いっぱい…傷つけちゃって」
「いや、傷ついたのはお前だろ、レイ…」
「こんぶ…」
レイは2人の優しさに目を潤ませた。
ペンダントに視線を落とす。
大好きな笑みで笑っている大好きだった人が、潤んだ視界にぼんやりと映る。
「ごめん…っ…2人とも…」
涙が落ちる瞬間にペンダントを閉じ、その上にポタリと落ちた。
やっぱりダメだ…
あの人のことを思い出すと…
「イクラ!」
レイが顔を上げると、狗巻が満面の笑みでプリンの乗ったスプーンを差し出してきた。
元気を出して!と言っているように聞こえた。
レイが口を開けると、甘いプリンが蕩け喉の奥へと流れた。
「しゃけ!」
今度はプリンのてっぺんに乗っていたサクランボを摘んで差し出された。
なんとなく、狗巻に譲ろうと避けていたたった一つのサクランボは今、レイの口の中へと入った。
甘酸っぱい味が染み渡り、あの頃の思い出も全部甘酸っぱかったと思い出す。
「ありがとう…棘くん…優しいね…」
狗巻はにっこり笑って、その後もひたすらレイの口にプリンアラモードを運んだ。
レイがもういいよぉ!と元気に笑うまで永遠に。