第36章 inequality 【特別編】
「チッ。じゃー勝手にしろよ。」
クマが面倒くさそうに言い捨て、またパフェに夢中になりだした。
レイはペンダントを外すと、パカッと開いて狗巻に差し出した。
狗巻は嬉しそうに目を細めてそれを取り、凝視した。
そして、みるみる目を見開いたかと思えば、固まった。
「……どうしたの?」
「・・・」
明らかに顔色が悪くなっているのが分かる。
「なんだ?俺にも見せろ………」
パンダが横から棘の持っているそれを覗き込み納得したように声を出した。
「………あぁ。だよな。
……棘、お前の反応、普通だよ」
「ど、どういうことなの、パンダ?」
「だってこれ、夏油傑じゃねぇか。
去年、こいつとこいつの一派が高専に来たし、百鬼夜行も起こしたわけだしな。棘だって見てる。どころか、棘も俺も、傑に致命傷負わされてる。」
レイは目を見開いて冷や汗をかいた。
そうだった。
そうだ…そうだよ…
自分が夏油傑の元恋人だったなんてこと、棘くんが知るはずはないし、最凶最悪の呪詛師である夏油傑とやりあったなら、その人と仲良さげに写っているプリクラを見て驚愕しないわけが無い。
ようやくクマが呆れたように声を出した。
「だから言ったろ。めんどくせぇことになるって。なぁパンダ、百鬼夜行ってのはどんなだった?」
「あぁ…初めは俺と棘は新宿にいたんだ。一瞬しか見なかったが、かなりの人間が被害を被ってた。夏油一派もなかなかの奴らだったしな。で、その後 五条に、俺と棘は憂太の所へ飛ばされたんだ。」
乙骨憂太のことは五条から聞いている。
レイは顔面蒼白にしながらも耳を傾けた。