第36章 inequality 【特別編】
「でもね…いつまでも呪いが消えないこんな世の中だからこそ…大切だった人のことを思い出していたいんだ…」
その言葉に、伏黒は目を見開いた。
"誰かを呪う暇があったら、
大切な人のことを考えていたいの。"
レイとそっくりの笑顔でそっくりの純粋さでそう言っていた義姉の津美紀は呪霊によって呪われた。
彼女こそ、長生きして誰よりも幸せになるべき存在だった。
そんな不平等に、少しでも抵抗したかったから…俺は…
「伏黒くんは?どうして呪術師になったの?」
その問いかけに、伏黒は暫し沈黙し、目を瞑った。
「俺は… 自分が助けたいと思った善人だけは、不平等だろうが絶対に助けたいんです。不平等な現実のみが平等に与えられている…そんな世の中に…少しでも抵抗したかったから…」
少しでも多くの善人が、平等を享受できる様に
――俺は不平等に人を助ける。
「そうなんだ。それって素晴らしいね」
ニッコリ笑ったレイをチラと見てから視線を逸らした。
「まぁ…高専に入ったきっかけは五条先生ですけど。」
「…え?…悟?」
「はい。五条先生が高専3年の時、うちに来ましたから。」
あの頃は蒸発した自分の父親と津美紀の母親が置いていった俺ら2人だけで暮らしてた。
その時に、あの白髪サングラスの怪しい高校生。
"君のお父さんさ、禪院家っていういいとこの呪術師の家系なんだけど、僕が引くレベルのろくでなしで、おうち出てって君を作ったってわけ。
君、見える側だし持ってる側でしょ。
自分の力にも気づいてるんじゃないー?
禪院家は才能大好き。術式を自覚するのがだいたい4~6才。売買のタイミングとしてはベターだよねぇ。
恵くんはさ、君のお父さんが禪院家に対してとっておいた最高のカードだったんだよー、ムカつくでしょぉ〜
君はどうしたい〜?
禪院家行きたい〜?"
"津美紀はどうなる?
そこに行けば津美紀は幸せになれるのか?
それ次第だ。"
"ない。100パーない。それは断言できる"
・・・