第36章 inequality 【特別編】
「仲間って、自分のできないことを助けてくれる人たちだと思うし、あと自分にしかできないことで助けてあげられる人たちのことだと思うの。」
そう言ったあと、レイがどこか遠くを見るような目で小さく呟いた。
「…いいな…羨ましいな……
私にも、そんなふうな時代があった…」
あの頃は…楽しかった。
辛いことよりも、大好きな仲間と、恋人と、クマと、皆で助け合って生きていて、圧倒的に幸せの方が勝っていた。
楽しい思い出ばかりだったのに、今となってはそれが全部、実は幻や夢だったんじゃないか…存在しない記憶だったんじゃないかと思えてきてしまう。
刹那げに唇を噛んだレイを訝しげに見ながら、伏黒が静かに言った。
「… レイさんは、どうして呪術師になったんですか」
レイはその問いに、思わずペンダントを掴んでしまった。
「私はね、実はね…別に呪術師になりたいと思ったこととか1度もなかったんだ。ただ…ある人に…導かれただけで…その人とただ…ずっと一緒にいたかっただけで……」
伏黒は、レイの悲痛そうな顔と、ギュッと握っている手元に視線を落とした。
「それって……
そのペンダントの中に入ってる人のことですか?」
その言葉に、レイはハッと顔を上げた。
伏黒は真剣な顔をしている。
「…う、ん、そう。
私って女々しいからさ、忘れらんないんだ」
寂しそうに笑い出す彼女が今にも泣きそうな顔に見えて、伏黒は眉を顰める。
ペンダントの中は知らないが、もう亡くなった人の顔写真だろうか?と思った。
これ以上は聞かない方がいいかもしれない…
と思い、話題を変えようと口を開きかけた時、レイが言った。