第35章 wonder
映画を観始めてしばらくたち、五条は訝しげにレイを見る。
「え…マジなの?レイ…」
「え?うん、なんか思ってたより全然怖くないね?」
「は…僕すんごい怖いんだけど…」
「あははは嘘でしょ〜?これがぁ?」
その反応にムッとした五条は違うDVDを物色し始める。
「あーもうこれにする!呪怨!!」
「えっ、なんで?まだ途中じゃん!」
「だめ!どーしてもレイを怖がらせたい」
「はぁあ??」
勝手な五条によって、結局それが再生された。
レイはみるみる顔を強ばらせる。
その顔をくすくす笑いながら覗き込む五条。
「っ…ちょっ…ねえ?これやめない?」
「え、なんでー?てかさぁ、さっきは全く怖がってなかったくせにこれはダメとかどういう趣向?」
「こっこーゆーのはちょっと…!
ゾンビ系は平気だけど、ゆ、ゆーれいとかは…
…!っあ!…ひぁっ……!!」
咄嗟に五条の腕を掴む。
しかし、五条も同時にレイにしがみつく。
「っ…やべえなこれ…確かに…」
こくこくと頷きながら目をギュッと瞑るレイと、いつの間にか抱き合うような形になっている。
「さっ、さとっ!ちょ…ねぇもうやめない?」
「うん…僕もさすがに……」
五条は自分で無理矢理つけておきながらも、ピッと電源を消した。
「ふーっ…はははっ…もー大丈夫だよお姫様?
さぁ寝ようか!」
「っ…うん……」
まだ目を瞑ったまま様子のおかしいレイの顔を覗き込む。
「…どーした?もう消したって。」
「……あのさ悟っ…」
「んんー?」
「……寝れない…かも…」
「はぁあ??」
「………」
五条は呆れたように笑ってレイを横向きに抱えあげた。
「っわ!なに?!」
五条は何も言わずに寝室までレイを運び、ポイッと投げ捨てる。