第35章 wonder
「さっ悟は…私の…大切な友達…だよ…」
「………」
どうして黙ってるの?
私、何か間違った返答をした?
レイは無意識に五条の胸元を掴んだ。
五条の腕の力が強くなる。
「…そっか、…友達だったら確かに…
こーゆーのって許されないよね…」
「………あの、悟…私っ…」
「ねぇ、僕もさ、前から思ってたこと、言っていい?」
「…うん。なに?」
少しの沈黙が流れ、五条の胸元からダイレクトに伝わってくる心音が一定のリズムで頬を揺らす。
フワッと五条の息が髪にかかった気がした。
「レイは僕の気持ちに気付かないフリをずっとしてるよね。なんで?何がそんなに怖いの?」
その言葉に、ハッと目を見開く。
固まってしまい、何も返せなくなった。
「レイのほうが、僕よりもズルいと思う。」
先程自分の言った言葉が脳裏に反芻する。
"私だって一応女の子なんだし、乙女心を弄ぶようなこととかズルいよ。悟は慣れてんのかもしれないけど、こっちは慣れてないし、そもそも私のことをなんだと思ってるの?おもちゃか何かと勘違いしてる?ていうか、こうして一緒に住むことになったのなら、尚更そういうの考えて行動してもらわないと、本気で私、出ていきたくなるかもしれない"
私は……
私の方が……
ズルい……の?
悟の気持ちを弄んでるのは…私…?
「っ!!」
何も言葉を発せないでいると、突然ガバッと押し倒された。
睨むような鋭い眼光で見下ろされ、息を飲む。
「"俺"の何がそんなに不満なの?
他の男に負けてるとこ、なんかある?」
「……え…っ…ぃや…さとっ」
「答えろよ…」
グッと手首に力が入り、顔を歪める。
「い、痛い…っ…離してっ……」
「俺、何もかも負けてないと思う。
なんかあるなら教えてほしい。」
……怖い。
突然"俺"になってる…
なんでそんな顔をしてそんなこと聞くの…
悟が負けてるところなんて…ないよ…
でもっ…