第35章 wonder
「い、一緒に寝るって…冗談言わないでよ…」
「え、冗談じゃないし。
てかそんなに嫌だ〜?ざんねーん」
本気で残念そうな顔をしてDVDをセットし、映画を付け始める五条に、我慢していた思いがふつふつと湧いてきた。
「あのさ悟。」
「ん?なに?」
少し鋭い視線をぶつけながら、あえて低い声色で言う。
「前から言おうと思ってたんだけど、悟って、一体何を考えてるわけ?」
「…はいぃ?」
本気で意味不明と言うような顔をされ、苛立ちが募り、テレビの電源をピッと消す。
もうこの際だから思っていることを全てぶつけてしまおうと思った。
「悟が昔からデリカシーないのは知ってるけど、恋人でもないのにそういう発言とか、き、キスをするとか…それってどういうつもりで何を考えてしてるの?」
五条のポカンとした表情を見つめながら、レイは何その顔?と言いたくなってしまった。
「普通ね、そーゆーことってありえないと思うわけ。私だって一応女の子なんだし、乙女心を弄ぶようなこととかズルいよ。悟は慣れてんのかもしれないけど、こっちは慣れてないし、そもそも私のことをなんだと思ってるの?おもちゃか何かと勘違いしてる?ていうか、こうして一緒に住むことになったのなら、尚更そういうの考えて行動してもらわないと、本気で私、出ていきたくなるかもしれない。」
捲し立てるように早口で言うと、ようやく五条の顔つきが変わった。
少し考え込むような動作をしたかと思えば、真剣な目でレイに向き合う。
「……なるほどぉ。ごめんね。」
「…えっ」
予想外の反応で、逆にレイは口を噤んでしまった。
てっきりケラケラ笑って流すのかと思ったので素直な謝罪に呆気にとられる。