第34章 surround ■ 【番外編】
(第8章 unexpected に戻ります)
「うはーあ…なぁクマ野郎、お前ってさぁ、真面目な話、一体なにもんなの?ポケモン?」
コントローラーをほおり投げ深く息を吐いて天井を見上げる五条に、クマは思いのほか真面目に言った。
「…おいらもわかんねーんだ。」
「…はぁ?」
「ただおいらが意志を持つ前、つまりただの人形だった頃、レイの意思がひたすら入り込んできてた。意思だけじゃない。お前らと喋ってる声も、泣き声も…」
「っえ!泣いてたの?」
目を見開く五条に、クマは眉をひそめた。
「やっぱ1人だったのか」
「…らしいな。つか、俺も傑も硝子もみんな、レイの涙って見たことねぇんだよ」
「ふーん」
まるで興味なさげに宙を舞うクマの目を、頭を掴んで乱暴に合わせる。
「なぁそんで、そん時さ、何で泣いてたの?」
「それは…秘密だ。個人情報だかんな。」
「あぁ?教えろよ!」
「誰にも知られず1人で泣きたい時もあんだろ。人間には。」
「・・・」
「人間はな…人形じゃない。いろんな感情の糸が複雑に絡み合ってて解れてないのは人間だけだ。それを無理に解そうとして切っちまったら廃人になる。それが人間だ」
強くそう言い放たれ、まさに人形に絆されているようなこの状況を少し不気味に感じる。
「…なぁ…なんで俺今、
人形のお前にこんなこと言われてんの…」
「知らねーよ」
……おいらが初めてレイの涙を感じたのは、やっぱり夏油傑に関してだった。
捨てられるかも…どうしよう
みたいな、そんなような感じの。
そんときの心の声だけじゃなく、四六時中、傑のことばかりが流れ込んできてた。
かっこいいな。とか、あれ傑どこ?とか、目が合っちゃった!とか、そんなどーでもいいことばかりだったが、ほとんど全てが傑に関してだった。
どんだけそいつのこと考えてんだよ…
そいつ何もんだよ。
とか考えてうんざりしてたら、しばらくして傑の呪力も流れ込んでくるようになった。