第34章 surround ■ 【番外編】
夏油はポカンとした表情になる。
「つ、伝わらない?意味わかんなかった?とにかくげ」
「ははは。分かったよ。でもレイには…そういう私でいてほしいって言われてるんだ。今回のことだって、君を助けたいの一点張りでね。驚いただろう?」
真美は気まずそうに眉をひそめながら頷いた。
「レイは悪者やズルい奴には容赦ないのさ。普段は温厚なのに、私も今日は驚いたよ。あんなに口悪くなるなんてな。しかも自分で言っておきながら手が早いし…ははっ。なのにこないだは自分のことをズルい女だなんて言っていたけど…」
真美は思った。
一番悪者で、一番ズルい奴はこの私だ。
夏油くんのことがずっと好きで、でもずっと自分のものにはならなくて、彼はいつも皆に優しくて親切で…
少しでも私の方に振り向いてほしくてあれこれアクションを起こすんだけど、天然なのかなんなのか…朗らかにかわされてしまう。
今回も、彼らを利用してただ夏油くんに構って欲しかっただけ。
これがきっかけでうまくいけば付き合えるかもなんて本気で思ってた。
でも…絶対に叶わないってわかった。
だって夏油くん、さっきからずっと彼女の方を見てる。
しかも…いつも夏油くんを見てきたはずの私が、1度も見たことがないような顔で…
愛しさ、慈しみ、恋慕、敬愛、そんな浅はかな言葉じゃ言い表せない。
そんな目は…他の誰にも向けたことがないよね。
「夏油くん、レイちゃんのこと、大好き?」
「っえ、…う、うん。」
夏油は突然の問に照れたように笑った。
「…愛してる?」
「ふ…もちろん。でも彼女は私には勿体ないくらいの子だから。その言葉は安易に伝えられないんだ…」
「は?何言ってるの?」
「真っ白な彼女を…私が黒く穢していってしまってる気がしてね…たまに申し訳なくなるんだよ…」
夏油は今までにないくらいに切なそうな笑みを浮かべた。
視線の先には、五条たちと満面の笑みで笑いあっているレイがいる。