第4章 bruise
「これを使うほどじゃなくて良かった」
そう言って夏油は耳のルビーを触った。
「これは使うつもりないもん!」
「君の命が本気で危ないと思った時は使えよ。
そう言ったはずだ。」
「…だとしても…わかんない。」
夏油は眉をひそめてからため息を吐き、突然レイの首筋に噛み付いた。
「っ!!…ちょとっ…?」
ジュッと吸いつかれ、離された時には意味深な笑みを浮かべている夏油が目と鼻の先にいて目を見開いたまま唖然とする。
「言っただろ、罰ゲームだよ」
「…な……」
何をされたのかよく分からなかった。
ただ、首に噛み付かれたとしか。
「あ、そうだ、忘れてた」
突然そう言って夏油は先程倒した呪霊を閉じ込めて球体にしたものを飲み込んだ。
彼は、降伏させた呪霊を球体状の呪力の塊にして飲み込み取り込む。
それを引き出して自分の呪霊操術とするのだ。
「ね、ねぇ?…それ…どんな味?」
「…うーん…そうだね… 吐瀉物を処理した雑巾を丸飲みしている様な味…かな…」
レイは顔を歪めて夏油を見つめた。
夏油は何食わぬ顔で先程のもう一体の塊を飲み込もうとしているが、そんな吐き気を催すようなこんな儀式を今まで何千回と繰り返してきたのだと思うと、いてもたってもいられなくなって夏油の手からそれをひったくった。