第4章 bruise
その隙に、木星と海王星を放った。
これを試してみたかったのだ。
この組み合わせがどうなるのかを知りたくても、なかなか試せるときがなかった。
できればこのくらい強いクラスの呪霊に、どのくらいの効き目があるのかを把握しておきたかった。
「っわ!なるほど…」
それは海の中で木が生い茂るように、瞬く間に珊瑚のような姿となって呪霊に絡みついた。
すかさず目一杯の呪力を注ぎ込んだトドメを刺そうと構えた瞬間、グラリと視界が揺れた。
足元が呪霊によって歪まされたのだとわかった瞬間、何かに手を引かれて引き上げられた。
それが夏油だとわかった瞬間には、自分は夏油の呪霊の背の上にいて、夏油の声が聞こえた。
「失せろ…」
こちらまで怯むような奥から絞り出した低い声。
その瞬間、対峙していた準1級呪霊は彼によって消されていた。
全てが一瞬のことすぎて唖然としていると、夏油も飛び乗ってきた。
「私の勝ちだね、レイ」
目を見開いたまま視線を移すと、いつも通りの優しい表情があり、正気に戻る。
「はー…あとちょっとだったのに…」
「足元の状況把握を怠りすぎだね。正直私もかなり焦った。あのまま引きづりこまれていたらと思うと…」
と言いながら夏油は顔を歪めた。
「…ごめん。気をつける。」
「でも凄いよ。準1級相手にここまでやれたんだ。レイは多分もう1級術師に昇格するよ」
その言葉に複雑な表情を浮かべる。
援護がなければここまでできなかったし、試したいことも最後まで試せなかった。
結局足でまといだった感じがして悔しい。