第34章 surround ■ 【番外編】
小さな紙袋を押し付けてくる硝子。
「…え…なぁにこれ?」
「いいから!…使って…
あとでまた…連絡して?私には。」
「…?…うん?」
紙袋を受け取ると、神妙な面持ちでパンっと両肩に手を置いてきた。
「… レイ…何があっても味方だから!」
「……?」
何かを喋る間もなく、硝子と五条は行ってしまった。
夏油は紙袋を見て「まさか…」と呟く。
レイは頭に疑問符を浮かべたままそっと紙袋の中のものを取り出した。
「え…なにこれ…なんで?」
妊娠検査薬……
どういうこと?…え?もしかして…
一気に顔が熱くなった。
「…わ、私、妊娠したことになってるの?」
「……そのようだね。」
「えっ。してないよ、なんで?……あっ…」
そうか。私が体調悪そうにしてたから…?
夏油は心底安堵したように深くため息を吐いて額に手を置いた。
「ならよかった……
さっきそのことで散々皆に責められて…」
「そん、な……私はただ…昨日…傑が女の子と…その…っ」
「見ていたのかい?」
「……うん」
「ごめん、それにはワケが…
聞いてくれ……」
夏油が俯いたままポツリポツリ話し出した内容はこうだった。
中学時代に仲の良かった女友達からある日連絡が来て、今付き合っている彼氏の暴力性や身勝手さに耐えきれず、別れてほしいのにどうしても別れてくれないのだという内容を相談された。
数日後に、会って話したいと言われて行くと、彼に電話をかけて説得してほしいと頼まれ、従った。
しかしそれでも当然電話の先では口悪く反抗してくるだけで別れてはくれず、その子は泣きながら夏油に抱きつき、夏油は今後どうしようか考えながらも慰めのつもりで背中を摩ってあげた…
ということだった。