第34章 surround ■ 【番外編】
夏油は深く深呼吸したあと、レイの自室のドアをノックした。
「… レイ?いるかい?」
ドアが開き、唇を噛み締めて目を合わせないレイが現れた。
夏油はその様子に一瞬ビクッとたじろいだが、短く息を吸ってレイの肩を優しく押した。
「…入るね。」
そして、レイをベッドに座らせ、隣に座る。
「……話がしたくて…」
「・・・」
レイは、ついに来てしまった…
と思い、ギュッと目を瞑る。
私は……捨てられる……
「……い、やだ…」
「…え?」
「聞きたく…ない…」
「…… レイ…
いや…でも…話さないわけには…」
「…やだ。」
夏油はレイの肩を優しく抱いて言った。
「まずは、その……ごめんね…」
「…っ…だから…聞きたくないったら…」
「いや、そういうわけにもいかないだろう。
とても重大な事だ。聞いてくれ…」
「・・・」
「私は…ちゃんと責任を取るつもりだ。
もしも君が…望むのであればだけど…」
「……どういうこと?」
「君がどちらを選択しようと、私はそれに従うってことだよ」
「なっ、なんで私がっ…どっちを選択って…
それって傑が選ぶことでしょ?」
「いや、君が選んでほしい。君の意見を尊重したいんだ。」
夏油はとても真剣だ。
レイはわなわなと体を震わせる。
あの女の人と、私のどちらを傑が取るか、私が選んでいいの?
だ、だったら…そんなの…
決まってるじゃん…
「わ、私…は……」
「……うん。」
「私は…傑と一緒に…いたいよ…」
「… レイ…」
「ずぅっと一緒に…いたい…っ」
「もちろん、私もだよ…
許されるのなら今後もずっと君のそばにいさせてほしい。」
レイはたまらず夏油に抱きついた。
それを夏油は優しく受け止め、ゆっくりと頭を撫で耳元に口を寄せる。