第33章 perplexity
レイは絶対に覚えてない。
あんなに昔のことは。
"俺" がいっちばん最初に
こいつに会った時の第一印象…
"え、死んでる?"
だった。
もしかして呪霊?
とか若干本気で思った。
そのくらい、ほっとんど生気が感じられなかった。
その代わり、滾り出す呪力は感じたから。
あー、こっち側の人間なんだ。
って分かったけど、
なんでそんな死んだ奴みたいなオーラ出してんだよって思ったね。
そんとき俺とした会話も、絶対にこいつは覚えてない。
まぁ別に、当時の俺的にも、ほんっとどーでもいいような会話だったんだけど。
お姫様の物語がどーこーって話の延長でした会話だった。
「眠り姫の話は知ってるだろ?」
「あ、うん…眠れる森の美女…だよね。
確か…王子様がキスをして…目覚めるやつ…」
「そうそう、でも知ってたか?
それは子供用に簡潔に作られた話で、元々のグリム童話はもっと複雑で違った話だよ。」
「No way!…どんな?」
そこで俺はけっこー詳しめに話した。
とある国に、長い間子どもを授かることができずに悩んでいる王と王妃がいた。
ようやく女の子を授かったのでお祝いのパーティーを開くことに。
この国には魔法使いの女が13人いたが、お城には金の皿が12枚しか無かったため、12人だけ招待し、残りの1人には声をかけなかった。
パーティーに出席した魔法使いたちは、「美」「徳」「富」など魔法を用いたプレゼントを王女に贈ったが、11人目の魔法使いがプレゼントを渡した直後、招待されなかった魔法使いが現れる。
自分だけが呼ばれなかったことに怒り、復讐として「王女が15歳になったら、紡ぎ車の針が指に刺さって死ぬ」という呪いをかけた。
城中がパニックになるなか、まだ贈り物をしていなかった12人目の魔法使いが、呪いを取り消すことはできないが弱めることはできるとし、「王女様は15歳になっても死ぬことはなく、100年間の眠りにつく」と告げる。
王女の行く末を心配した王は、国中の紡ぎ車を捨てた。