第32章 indifference
七海は深手を負わされてしまった。
「なんだ、こんなもんか、1級術士…
あと2、3回触れて、人間やめさせてあげるよ。」
真人が手を構えた時、どこからか呑気な声が聞こえてきた。
「おーいシチサン。
おいらの手前、まだくたばるんじゃねーぞー。」
寝そべりながら浮遊しているクマのぬいぐるみに真人も七海も驚愕する。
「え、なに、キミ…
いつのまに?」
「な……」
そして七海は思った。
どうやら私は…死んだらしい。
時計を確認する。
進んでいる…!!
「…残念ですが、ここからは時間外労働です」
時間による縛りが解けた七海はみるみる呪力を滾らせていく。
「ほう……シチサン野郎は時間で自らに"縛り"を設けて呪力を制限していたのか。おいら来なくてもよかったな。」
クマの呟きとと同時に、一気に七海が加速し
攻撃を放った。
!!!十劃呪法・瓦落瓦落!!!
これはクマとの任務時の、あの時と同じ技。
破壊した対象に呪力を込める拡張術式のため、自らも瓦礫の下敷きになり相打ちとなる可能性がある。
「一旦、退きます。
お互い、生きていたらまた会いましょう」
そう言い残し、七海はクマと共に外へ出る。
たちまち地表は震度2くらいの地震が起こった。
「お前、しっかり成長したんだな。シチサン。」
大きな鉈の呪具に、広い攻撃威力。
自分の言ったことを己の力として掌握できている七海に、クマは満足そうに笑う。
七海は仏頂面のまま、突然クマを抱き締めた。
「え」
「…どうやら私は…生きているらしい。」