第32章 indifference

なぁ、本当に分かってたのか傑？

レイがどれだけお前のこと好きなのか。

いつもどんな顔でお前のこと見て語って感じてたのか。

レイにとってのお前ってなんだったのか。

知ってたかよ？



｢…… レイ、…｣

｢…うん？｣

｢……そろそろ目隠し返して｣

｢…やだ｣

｢ふっ、なんで｣

｢…これで顔隠してるとか…ズルいもん｣

｢じゃあレイがしてみて…｣

｢え｣

｢いいから｣

レイは眉をひそめながらゆっくりと目隠しを巻き付けた。

｢わ、わぁ…なにこれ…本当になんにも見えない…
よくこんなので……｣

｢… レイ、傑に会いたい？｣

｢……っ…会いたいよ、会えるもんならそりゃ…｣

五条の顔は全く見えないから、どんなつもりでそんなことを言っているのかも分からないし表情もわからない。
声のトーンは穏やかだ。

｢…っ！｣

突然体を包まれたのがわかった。

｢さと、る？｣

耳元に五条の吐息がかかった気がした。
頭の中が混乱する。

｢傑を想像したら、これ傑にされてるって感覚になれる？｣

｢なっ……どういう……っ｣

｢もしここでキスしたら…傑にキスされてる感覚になれる？｣

｢…っ…なれ…ないよ……｣

｢…そっか……ふ…だよね…｣

耳元の囁きは切なげで、胸が締め付けられるような感覚がした。
これは、悟の優しさなの？それともいじわるなの？

何度か背中を撫でられ、そして体が離れそうになった瞬間、レイは無意識に腕を回し、つなぎ止めていた。

｢……… レイ…？｣

｢もう少しだけ…ギュッてしてて…ほしい…｣

｢・・・｣

｢ダメかな…？｣

｢いいよ…はい、ギュゥー…｣

｢ごめ、んね…｣

｢それ聞き飽きたよ、バカ。｣

言った通り、五条の力がギュッと強くなり、トクトクと互いの鼓動が感じられるくらいに密着した。

｢……あっ…たかい……
安心…する…っ…｣

｢僕も。｣

いつぶりだろうか、この感覚は…
レイは目隠しの中で目を閉じた。

傑とはやっぱり全然違くて、目が見えなくてもすぐにわかる…
でも…温もりはおんなじくらい暖かい…