第32章 indifference
「だよねぇ?レイ、
僕の生徒だよね?」
口を解放され、コクコクと頷く。
しかし、警官は当然、無理やり頷かされていると思っているようで警戒心を崩さない。
「なら身分証を見せなさい。」
「んーっと…はい。」
五条の出した高専の身分証を手に取りまじまじと見る。
「…なんだあの宗教学校か…そっちの子は?」
レイは慌てて制服を探り、学生証を出した。
警官は2つを手にし、目の前の男女を見比べながら唸った。
そして、レイのものに、異変を感じたようでぶつぶつと呟き出した。
「んー?あれ…今って△△年だよな…?
この学生証は……ん?…なぜ…発行年月日が…
……偽装…?…か?……」
しまった、とレイは思った。
発行年月日は10年前のものだ。
こんなおかしなことはないだろう。
「あと、そこの君ね、目隠しを取りなさい」
「あのね、おまわりさん、この子が補習から逃げるものだから追いかけてたんですよ。ってことで急いでるんです。もういいですか?いいですね?」
五条が早口にそう言ってババっと身分証をとると、レイの手を引いて一目散に駆け出した。
「走れっ」
「っ!こら待ちなさいっ!」
背後からの警官の声は無視し、ひたすら走る。
しばらく走ったところで突然一緒に瞬間移動させられ、気がつくと先程の公園に戻っていた。
驚いた表情をしているレイの顔を覗き込み、五条はニヤリと白い歯を見せた。
「マジ、隙見せすぎ。ウケる。」
レイは険しい表情に変わる。
「どいて…」
「追いかけっこはもう終わりだよ、姫様。
大人しく捕まったらどうー?」
「……1人になりたいの。今は。」
「1人になって、どうすんの?」
「・・・」
また歩みを進めるレイの腕を掴むと、グッと引き寄せて顔を近づけ、真剣に言った。
「僕に許可なく死のうとしてるなら…殺すよ」
「………殺せばいいじゃん。
傑を殺した時みたいに……」
「・・・」
「・・・」
五条は腕を離した。
「怒ってんの?」
「…別に…怒ってない」
「怒ってるじゃん」
「怒って…ないよ…」
沈黙が流れ、その静寂さは残酷なくらいに頭の中を冷静にした。
私…さっきなんて言った?