第32章 indifference
「はぁ…はぁ…はぁ…」
しばらく行ったところでさすがに息が切れてきて振り返るが、追いかけてくる気配はない。
ホッとして前を向くと、当たり前のように五条が突っ立っていて、トンっとぶつかった。
「はい、レイちゃん、
行き止まりで〜すっ」
レイはハッとしたように目を見開く。
あの時の、彼と…
おんなじ…セリフ…
どうしてこうも…
思い出させるの…
残酷すぎるよ
レイはギュッと目を瞑ると、ドンと押し退けてまた走った。
もう何も考えたくない
夢なら覚めてよ
どうせこれは夢でしょ
初めから、ずーーっと…
ドンッ
また五条にぶつかった…
と思って前を睨んだ瞬間、巡回していたであろう警察官だとわかった。
「君、その制服は…高校生かな?
大丈夫?誰かに追われているの?」
泣き腫らしたような顔と息を切らして必死に何かから逃げているような態度は誰の目にもそう映るのは当然だった。
「あ………はい……」
言ってしまってから、ハッとなる。
つい馬鹿正直に、はいなどと答えてしまった。
警官はたちまち険しい顔をする。
「そうか。…もう大丈夫だからね。」
警官は、戸惑っているレイを庇うようにして1歩前に出た。
しかし、いつの間にか真後ろに五条の気配がしてレイだけがハッと振り向く。
「さとっ!!」
「?!?!」
警官が振り向く前に手で口を塞がれた。
「おいお前!その子から離れろ!」
五条から小さな舌打ちが聞こえた。
警官は顔面蒼白にしている。
目隠しの明らかに怪しすぎる男が、高校生の女の子の口を塞いでいるなど誰がどう見ても正気の沙汰ではない。
五条はニッコリと笑いながら言った。
「怪しい者じゃないんです〜
この子の担任の教師でして〜」
「あぁ?!」
そんなふうに見えるわけが無いので警官は冷や汗を流しながらも1歩2歩と近づいてくる。