第4章 bruise
2階に上がる階段の途中から、早くも夏油が自分の中の呪霊を引き出した。
彼の能力は、体内に宿した数千もの呪霊を使役する呪霊操術だ。
降伏させた呪霊を自分の身に宿して自在に使役する。
夏油の場合、二級以下の呪霊であれば無条件に取り込むことが可能らしい。
「んー、メインはどこかな」
今呪霊を出したことにより、迫ってくる細かい呪霊たちは塵のように消されていき、自分たちはなんなく歩を進めている。
ハッと気配を感じたレイは瞬時にピアスを上に投げた。
それが強力な竜巻を興し、上から迫っていた数体の呪霊が雄叫びを上げて消えた。
「…さすがレイ。じゃあ上は頼むよ」
そう言って夏油に手を離され、真剣に頷いた。
しばらくしてから、首をかしげずにはいられなくなってくる。
「なんか…おかしいよね?さっきから細かいのはたくさん来るのにどれも3級以下。森さんの言う準2級以上はどこ?気配もない」
「ああそうだね。もしかしたら準1級かそれ以上かもしれない。気配を消すのが異様にうまいし、我々を様子見しているような知性を持ち合わせている節もある…」
その言葉に、息を飲む。
「まさか特級…?ってことはないよね?」
「それはないとも言いきれないね」
「っ…」
突然夏油はグイとレイの腕を引き、また数体呪霊を出した。
「いいかいレイ。今から一気に上に登る。細かいの相手にしてたらキリがないから屋上まで駆け上がる。その間の邪魔な奴らは排除してってくれ。私は自分の呪霊を先に行かせながらそいつを探り当てる」
「わかった…」
互いに大きく頷いた瞬間からすごいスピードで上を駆け上がり、廊下を通り抜ける。
その間に邪魔な呪霊を2人で切るようにして遮って行った。