第32章 indifference
「やっ…ぱり…私のっ…せ……」
涙が溢れて止まらなくなる。
あの頃、私が1番彼の近くにいたはずだ。
もっと彼を見ていれば…
自分のことばかりじゃなくて、
もっと彼の話を聞いていれば…
傑はたくさんの人を傷つけることも、
自分自身を傷つけることもなかったかもしれない。
人殺しにならなくて済んだかもしれない。
それかあのとき、私も無理にでもついていって、傑を説得して、一緒にどこか遠くへ逃げていればよかったかもしれない。
そうすれば、百鬼夜行を起こさせずに、余計に人が死ななくて済んだかもしれない。
今も尚、傑は生きて私と一緒にいたはずだ。
全部私のせいだ。
私なら、きっとどうにかできた。
傑を止めることができたのはきっと私だけだった。
なぜあの時追わなかった?
なぜあの時離した?
なぜ愛してると叫ばなかった?
どんな手段を使ってでも傑と一緒にいけばよかった。
本当に傑はもうこの世にいないの?
誰か嘘だと言って。
これは夢だと目覚めさせて。
「ごめ…さ……ぐる……ゆる…して…」
「…なぁ、 レイのせいじゃないよ。
なんで自分を責めてるの…」
「ぜ、ぶ、っ……私のせい……っ」
「違うったら。なぁ、レイ…」
悟の優しい声はとても逆効果だと思った。
「…うっ……う…傑っ……ごめ…っ」
死んでしまった人たちも…ごめんなさい。
できることならば、私が全て償いたい。
「自分を責めるな、頼むから…
僕を責めてくれよ……なぁ?」
悟が私の手に触れた。
咄嗟にそれを払い除けてしまった。
「っ…あ…ごめっ……」
悲しげな顔で真っ直ぐ見つめている悟の目と目が合った瞬間、急いで視線を逸らした。