第32章 indifference
「……ぅう……傑っ…
また……会いたい…っ…」
言ってしまってからハッとなる。
こんなことを言ったら五条を傷つけてしまう。
責任を感じさせてしまう。
「……ごめん…悟を責めてるわけじゃ、ないの…」
「いいよ。わかってる…」
傑の死がなかなか受け入れられない気持ちは分かる。
僕だってそうだった。
五条は立ち上がり、鍵付きの引き出しをあけ、あるものをレイに渡した。
レイはそれを受け取って目を見開く。
「………これ…って…」
「うん。傑がさ、最期…
これだけは地獄に持って行きたくないって言って…」
レイがあげたクリスタルのピアス。
それは手のひらの上であの頃と変わらない輝きを放っている。
そこにまた、涙が1粒落ちた。
「傑は最期まで、レイのこと、
好きだったと思うよ…」
"好きだ"
最後に聞いた、彼の言葉を思い出してまた泣いた。
レイは、ルビーのしてあった穴にそれを埋めた。
新たに装着されたそれはレイの耳で輝き始めた。
夏油傑という人間はもうこの世にいない。
自分の命よりも大切だった、
この世で1番愛していた人は
もう……
「あいつは地獄にはいないよ。」
ポツリと五条の言ったその言葉に耳を傾ける。
「…傑は…天国にいる。
レイに会えただろうと思ってたけど、
それはまだ先になりそうだな…」
レイはギュッと目を瞑り
何度も頷いた。
うん、そう、そうだよ。
きっとそう。
天国で、私のこと待っていてくれてるはず…
それまで…私…生き抜くね。
せっかくあなたが生かしてくれた命なんだから…
そう言いたい…
でも今は……
辛すぎる……っ…