第32章 indifference
「でも…そんなこと…って…」
レイはずっと俯いている。
クマも五条も声を発さずに考え込む。
恐らくだが……
レイが夏油傑を愛しすぎていて依存しており、それが呪いとなっていたはずが、実は夏油のほうがレイを呪っていた…?
夏油に初めて会った時、"行こう、君が君でいられる場所へ"と言ってレイを連れた瞬間から、実は夏油の方が"縛り"のような呪いとなっていて、それに従いみるみる愛と依存に陥っていたレイ自身と主従関係になっていた…?
「…だとしても…おかしいか。
だってあの時、レイは…」
確かにあの時、レイは跡形もなく消えた。
痕跡すら残らなかった…
「…そうだよ、…違う。」
突然レイは否定した。
「傑を呪っていたのは…私。」
「…だとしても、」
「私はあの時…呪霊にやられる寸前に…
ルビーを…取ったの…」
「「!?」」
そうだ、気が付かなかった。
レイはルビーのピアスをしていない…!
ということは…
夏油がレイを生かし守りたいという強い気持ちを呪力として込めたルビーのピアス…
それが発動され、そして夏油が死んだことにより互いの呪い、もしくは一方の呪いが解除、
複雑に絡み合ったその情報の処理に時間がかかり、さらに時を経て、現在に至った…?
「…傑が…守ってくれたんだ…最期まで……」
レイが涙を流し始めた。
五条がティッシュの箱を渡す。
しばらくその嗚咽を聞きながら、五条もクマも黙っていると、テーブルの上はティッシュでいっぱいになっていた。