第32章 indifference
帰ってきた夜蛾を見て、皆唖然とする。
「学長〜どうしちゃったんすか?
顔がアンパンマンになってますよ?」
五条が噴き出すと、夜蛾は
気にするな、と一言。
そして気が付いたようにクマを抱き締めた。
「お前まで!!!なぜ黙っていたんだー!!」
「うううう苦し苦しいっ!!夜蛾てめっ…!」
「ね、ねぇ…?
夜蛾先生はいつのまに学長になってたの?
…あれ?最初からだっけ?」
何もかもがわかっていないレイに、五条とクマと、そして夜蛾は口々に説明を始める。
今が何年の何月何日なのか、
レイは死んだはずだったこと、いや、そう皆思い込んでいたこと、クマの覚醒。そして夜蛾は学長になり五条が教師をしていることなど。
全てを聞き終えたレイは何も言葉を発さずに顔面蒼白にした。
もちろん、伏黒も同じ表情をして押し黙る。
「……ほらよ。」
クマがレイにペンダントを渡した。
同じものが、クマの首にかかっている。
「…ありがとう……」
レイはおずおずとそれを着け、確認するようにパカッと中を覗き、また戻した。
伏黒はその一部始終を見つめる。
ロケットペンダントだったのか…
何か大切なものでも入れてあるんだろうか?
「とりあえずさ、レイは一旦うちに来い。
クマもいるんだ。もう一度詳しく話そう。」
「おう、そうだな。っつってももう一人いるが」
そのクマの口をまた五条は塞いだ。
「…ありがとう。伏黒くん。
またね。怪我、お大事にね?」
別れ際、一番いろいろな感情で複雑なはずのレイが笑顔を向けてきたので伏黒はそれにすら驚いてしまった。
「…あぁ。そっちも…」
「あはは、レイって呼んでよ」
「…… レイさんも。」
彼女は屈託のない笑みで頷くと、五条とクマに連れられて行ってしまった。
伏黒は無意識に絆創膏をさすっていた。