第32章 indifference
おぶってなんとか夜蛾の元へ運んでいくと、
夜蛾の第一声は、「転校生なんぞ…」
から始まり、
「…んなっ?!?!?!」
あまりの驚愕ぶりに、伏黒は腰を抜かしそうになるほど驚いた。
「な…なんですか。」
「……どういうことだ…
あぁ…そこに寝かせるといい。」
学長室の大きなソファーに横たわらせると、夜蛾はサングラスを取ってまじまじと彼女を覗き込む。
伏黒は一先ずここまでのことを説明した。
「……間違いない…
神無月…レイ……
どうなっている?」
「…お知り合いですか?
ていうか、そもそも高専の制服着てるわけだし、知ってなきゃおかしいですよね。」
「……知ってるも何も…こいつは俺の…
いや、だがこんなことって…」
ぶつぶつと何かを呟きながら冷や汗を拭き始めた。
伏黒はなにもかもが意味不明すぎて一先ずスマホを取り出す。
「とりあえず五条先生に来てもらいます?
今、俺から電話しますんで。」
「あ、あぁ……」
夜蛾はまだ狼狽している。
もしも本当に彼女だったとして、10年も経った今、なぜここへ?
特別な術式の類?
特別な呪霊の類?
もしくはこれ自体が、夢か幻覚か?
「なぁ…伏黒…」
「…はい?」
「俺を1発殴ってくれないか。」
「……は?」
「いいから殴ってくれ!」
伏黒は小さくため息を吐くと、思い切り夜蛾にパンチを入れた。
ズドドド!!
あ、やべ。
ちょっとやり過ぎた?
そう思いつつも、真顔のまま、
床に転がっている夜蛾に手を差し伸べる。
「……ゆ、夢ではない…ようだな…」
「でしょうね。…血が出てますよ。」
この事実は伏黒に伝えるべきか否か…
いや、今はまだやめておこう。
とにかく状況が掴めん。
「…はぁ…伏黒、悪いが、頭を冷やしてくる。ついでに傷も。その間、こいつを頼めるか。」
「…分かりました。」
夜蛾は顔色の悪いまま傷を押え行ってしまった。