第31章 usurp 【番外編】
そのままひょいっと持ち上げられたかと思えば、横向きに抱き上げられた。
一瞬のことすぎて唖然とする。
夏油はいつもの優しい笑みで見下ろしていた。
「ほらお姫様。次は何をご所望かな?」
「え…っ…あ…」
本探しを手伝ってくれるということだろうか?
だったら…
「あの…夏油くん、すごく助かるんだけど、
それならこんなっ、お姫様抱っこじゃなくって、五条くんみたいに肩車でも」
「それだと君の顔が見えないだろう?
それに、レイはお姫様が好きじゃなかった?」
「そ…そだけど……。
絶対手が痺れるはずだし…」
「そんな心配は無用だよ。
こんなに軽いのに。逆にこっちが心配になるなぁ」
夏油は五条と5cmほどしか身長が変わらないため、彼もかなり高い。
なのでお姫様抱っこのこの体勢でも安易に高い位置の本は探すことができるのだが、単純に少し恥ずかしかった。
でも、当然嬉しさも勝っていて、レイはいつの間にか笑顔で本探しを手伝ってもらっていた。
「ありがとう!これでもう充分!」
「そう?
本を戻しに来る時も私を呼ぶんだよ、いい?」
「うん!」
満面の笑みになりながらも、内心だいぶ照れていたし混乱していた。
お姫様抱っこも壁ドンもなにもかもが初めてで…
思えば、出会った時から"初めて"をいろいろと奪われている気がする…
私は夏油くんのことが好きだけど、
夏油くんは一体私のことをどう思ってそういう行動をしたり、発言をしたりしているのだろうか?
聞きたくても、勇気がなくて聞けるわけが無い…