第31章 usurp 【番外編】
結局、レイは風邪だったらしく寝込んでしまった。
毎晩、髪も乾かさずに読書に夢中になっていたからかもしれない。
レイが目を開いた時、ほぼ毎回といっていいほど夏油がいる。
「……目、覚めた?…大丈夫?」
「わ…夏油くん…びっくりした…」
「ふっ…今更じゃないか。
熱は下がったかなー?」
そう言って夏油はレイの額に手を当てる。
ドキドキと鼓動が跳ねて、火照った顔はさらに熱くなる。
「んー…まだ少し熱いな…」
「あ、で、でもっ…もう全然大丈夫だからっ…」
「水いる?何か食べれそうなものある?」
「う、移しちゃ悪いから、あまり私の部屋へ来ない方がいいよ」
「そんなに拒否られると…傷つくな…」
とてつもなく悲しそうな顔をされ、レイは慌てて起き上がる。
「違う違う、そうじゃなくって!
いろいろ忙しいだろうし私のことなんか放っといてもらっても」
「何を言ってるのさ。
君以外の心配事なんて1つもないよ。それに…」
夏油はレイの頭を撫でて目を細めた。
「君が元気がないと、調子が狂うんだよ…」
あまりの色気にレイは直視できなくなって布団を目まで上げた。
くくくっと夏油の笑い声がする。
「ほら、寝てないと…」
そう言って夏油はそのままレイの上半身をベッドに押した。
レイはまだ布団で顔を隠している。
「……ふ…… レイ、窒息死するよ?」
「・・・」
「…こら」
布団をめくろうとするが、レイは頑なに離さない。
これ以上、夏油の顔を見ていたら窒息死以前に息が止まってしまう気がした。