第31章 usurp 【番外編】
ver②
とある日・・・
誰もいない教室に入った途端、レイはフラリとよろけた。
ガタタッと机に手をついて深く深呼吸する。
「うー…目がチカチカする…
寝不足…かなぁ…」
最近、ある本に夢中になっていて、寝る間も惜しんで夜は読書ばかりをしているから、多分そのせいだと思ったが、なんとも言えない気持ち悪さが込み上げてきてその場にしゃがみこんだ。
すると、頭上から声がした。
「え、何してんの?へーき?」
五条だとはわかったのだが、レイは床を見つめたまま立ち上がることさえできない。
夏油は教室に入ってから、その光景に唖然とする。
「悟!何をしてるんだ?!」
「は?俺何もしてねぇよ。俺も今来たとこだし」
夏油はすぐさまレイの元へしゃがみこみ、両頬に手を添えた。
「大丈夫かいレイ?!
私の顔を見て。」
「・・・」
レイは虚ろな目のままボーッと夏油を見つめる。
眉を顰めて心配そうな表情ではあるが、かなり真剣な目をしている。
「私のこと、わかるかい?見える?
私の顔は君の目にハッキリ映ってる?」
ものすごく顔を近づけられ、レイはなんとかこくりと頷いた。
すると、夏油の横から見下ろしていた五条もしゃがみこみ、サングラスをずらしながら言った。
「顔色悪いな。貧血ー?あ、もしかして生理中ー?」
カチンときた夏油がパシンと五条の頭を叩いた。
「ってぇ!!なにす」
「この状況でもデリカシーの欠けらも無いんだな君は!」
「いや、つかお前ちょっと大袈裟すぎじゃね?」
夏油は呆れたように五条を無視すると、レイを抱えて立ち上がり歩き出した。
隣で五条も歩みを進め、レイの顔を覗き込む。
「おーい起きてる〜?俺のことは見える〜?」
すると夏油は五条からレイを隠すように体を捩った。
「君のことを映す必要はない。」
キッパリそう言うと、足早に行ってしまった。
五条はポカンとした表情でその場に立ちつくす。
「過保護すぎだろ、なにあれ…傷つくわぁ」