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walking proud~呪術廻戦~R18~

第29章 intention


「私は…昔…夏油さんに…
言ってはいけないことを言ってしまいました…」


「え、どんな?」


七海はウイスキーのグラスを傾けながら、複雑そうに押し黙り、暫くしてまた静かに話し始めた。


「…もう、五条さんあなた一人で、よくないですか…と。
あれは言うべきではなかった…」

「……そぉ。でもナナミンのせいじゃないよ。
あいつの問題。てゆーか、僕のせ」
「いいえ。」

七海にその言葉は遮られた。


「……言い訳ではないんですけどね…
私は…それはあなた方が1人でも大丈夫だとか、五条さん以外は弱いとかいらないとか…そういった意味で言ったわけではないんですよ…」

灰原のことを思い出しながら、奥歯を噛み締める。
グラスの氷がカランと溶けた音が異様に大きく感じた。



七海は静かに話し出す。


「私はあなた方2人を見ているのが、
なんだかんだ好きだった…
羨ましくも思っていたし、憧れてもいた…」


自分と灰原も、そんな2人を目指していた。

とても儚いあの頃の記憶。
ずっと、思い出さないようにしてきた。



「…ただ、自分の無力さを肯定する何かが欲しかった…」


五条は音を立てずに笑った。

「いいよ、分かってる。
それにそんなのは僕も傑も同じだった。
いくら僕らが最強と言われていようと…ね…」


思い出したくない思いと、
思い出したい思い。

何度も葛藤してきて、結局いつも思い出してしまっていたのは、今を生きていないことと同義なのかもしれない。

ならば、忘れなくてはならないかもしれない。


「傑が生きているうちは、僕はおかしかったんだ」

「…はい?」

七海の片眉が僅かに上がった。
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