第29章 intention
「ナナミ〜ン!
元気だったァァ〜?久しぶりぃ!」
七海は仕事終わりに会社の前で待ち伏せていた五条悟を不機嫌な表情で睨む。
県外なのに、わざわざ来た?
まぁ瞬間移動も使ったのだろうが…
そう思ってため息を吐く。
「何用ですか」
「んな冷たいこと言わないでさ〜
ちょっと今夜は付き合ってくんない?」
「お断りします。時間外労働は受け付けておりません。」
「違うよナナミン!
別に勧誘に来たわけじゃないよ今日は!」
高専卒業後、ずっとサラリーマンをしている七海に対し、五条は時々、呪術師に戻るよう言ってくるのだが、今日はどうもそうではないらしい。
というのも、どことなく、醸し出しているオーラが違う。
そう七海は気づき、ため息を吐いて承諾した。
今夜だけですよ。と付け加えて。
そして、酒好きの七海はゲコである五条を無視してお気に入りのバーに入った。
ウイスキーを飲んでいる隣で五条はジュースのストローに口をつけている。
百鬼夜行が行われた連絡は、七海にも届いた。
しかし、県外な上に、わりとすぐに終息したとのことで結局今まで仕事をしていた。
「で……何の話でしょうか。」
横目でチラリと五条を見る。
五条は明るい声を出した。
「僕ね〜、今日ついに、夏油傑を処刑したんだよ」
「?!?!」
驚愕の表情で黙っている七海には目もくれず、五条はまた喋りだした。
「僕ってちょっとおかしいのかな〜
親友をこの手で殺したのに、なんかホッとしてんだよね〜
ようやく殺せてよかったな〜みたいな、
喉に刺さった小骨とれたスッキリ感に似た感じかなー?」
「まぁ…おかしいのは今に始まったことではないですが…」
「ホント辛いとか悲しいとか罪悪感?みたいのよりもさ、なんかーこうー…」
「ずっと…黙っていたことがあります。」
突然言葉を被せてきた七海にポカン顔で目を向ける。
「…ん?」
七海はいつもの仏頂面が、更に眉間のシワが濃くなっていて、なんとも言えない雰囲気を醸し出していた。