第28章 cause
「…… レイのことは?
どう感じたんだよ…」
その言葉にも、夏油は顔色を変えずに静かに言った。
「今更なにを言っているんだ?
それに私は、君に譲ると言ったはずだが?
そんな君が彼女を守れなかったことについて、もはや私がどうこう言える立場ではないからな。」
静かに拳を握りしめた五条を一瞥すると、夏油は笑いながら言った。
「なんだ、私に怒られるとでも思っていたのか?
ははは、安心してくれよ。
君の所有物になったものをとやかく言う権利は私にはないんだから。」
「…傑…お前……」
「あー!!夏油様!!
お店閉まっちゃうぅ〜!!早くーっ!」
突然の菜々子の大声に、夏油はハッと気がついたように顔色を変えた。
「!…もうそんな時間か…すまないね悟。」
そしてにこやかに踵を返した。
「彼女たちが竹下通りのクレープを食べたいと聞かなくてね。お暇させてもらうよ。いやはや…あんな猿の多いところの何が…」
「このまま行かせるとでも?」
「やめとけよ悟…」
ピタリと夏油が止まり、空気が一気にどす黒くなった。
「君のかわいい生徒が私の間合いだよ…」
気がつくと、たちまち皆は夏油の呪霊に囲まれていた。
「それでは皆さん戦場で。」
ヒラヒラと手を振り、
夏油は鳥に乗って去っていってしまった。
五条は眉間に皺を寄せる。
信じられない言葉を聞いた。
かつて、心の底から愛したはずの彼女たちについて、まるでなんとも思っていないかのような口ぶり。
あれが本当に夏油傑?
本当にかつての親友だった、あの傑か?
恐らく、レイが死んだことをきっかけに、クマのことさえもどうでもよくなったのだろう。
己の大義にのみ執着して生きるようになった。
愛を失い、もうそれしか無くなったんだ。
愛よりも、大義。
きっと……。
五条は辛辣な表情のまま呪霊を祓った。