第28章 cause
高専ではすぐさま会議が開かれた。
「夏油傑…呪霊操術を扱う特級呪詛師です…
設立した宗教団体を呼び水に、信者から呪いを集めていたようです。」
伊地知の言葉に、五条はかつての親友との会話を思い出してしまった。
教祖をやっていたのか、あいつは…
「あいつが素直に負け戦を仕掛けるとは思えない…」
「ガッデム…だが、こちらも総戦力を駆使する。
OB・OGそれから御三家。アイヌの呪術連にも協力を要請しろ!!
今度こそ夏油という呪いを完全に払う!!」
「…とか息巻いてんだろうな。あの脳筋学長。」
夏油はくくくっと笑った。
「夏油様〜やっぱこれすごーくおいひい〜」
「食べないのー?夏油様は。」
クレープを美味しそうに頬張る菜々子たちを見て呆れた声で言う。
「食べるわけがないだろう?
そもそもこんなに猿の多い場所で…」
「うっわー、にしてもやっぱここって呪霊多いねー?」
「うん…クレープは美味しいのにー…」
夏油は真顔で視線を走らせる。
そりゃそうだろう。こんだけ人間がいるんだ…
それだけ呪いも溜まる…
夏油は微笑んでまた菜々子たちを見た。
「お目当てのものが食べられてよかったね。
だが、こんなに猿の多いところで食事をするのは感心しないな。それを持ってとっとと帰ろう。」
「待って夏油様〜!プリクラも撮りたいの〜!」
「行こう行こう〜!猿に占拠される前に!」
「えぇ?!」
2人にグイグイと引っ張られていく。
夏油はフゥとため息を吐く。
いつか君たちが、心の底から幸せに過ごせる楽園を築こう。
何にも脅かされることのない世界。
当たり前の幸せを当たり前に享受して、
最期まで快適に生きるんだ。
心の底から笑うことのできる、幸せな人生をね。