第3章 comrade
「ねぇ…傑は完全を求めているのかな?」
五条は窓の外を見つめながら短く息を吐いた。
「さあ?俺にも傑の考えていることがよく分からねぇときがある。ていうか、いつもそう。まぁ結局は自分以外なんて他人なんだから分かりっこないんだけど。」
「そう、だね。全部知りたくても、それは叶わないよね。」
絶対正しいことや、絶対正しい人間が、この世に存在するはずがない。すべては、不完全だ。
だからこそ自分のことも他人のことも100%はわからない。
「ただ俺は…“この人となら「俺らしいまま」つきあえる”
そう思った人たちとしかつるまないだけだ。」
世間からいくら拍手喝采をあびようとも、結局、自分らしく生きているという実感が得られなければ、何の意味もない。
「うん。私も同じ。自分を偽らなくていい居場所は、みんなと一緒にいることなの。」
「まぁ俺も…天才だ最強だなんだとか言われてるけどさー、そういう風に見ないで普通に接してくれんのは傑とかお前らだけなんだよー」
あぁ、そっか。
だから一緒にいて楽なんだ。
もう菓子には飽きたのか、五条は頬杖をついてボーッと外を眺めている。
サングラスの隙間から見える長く白いまつ毛が影を作って妖艶に見えた。
「…悟は才能もあって天才だと思うけど、でもそれはきっと、そういう仲間たちに囲まれているからだよね?人はどんなに素晴らしい能力を持っていても、自分一人ではそれは発揮できないと思うんだよね。だから傑とか私たちとつるむことは必要でしょ?」
その言葉に、五条は目を見開いた。
目の前で流れていく風景が突然目に入らなくなる。